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【マフィア松】Focus Me【おそ松さん】

第2章 信ずるは良し、信じないのはもっと良い


何が破裂するような、体に響く音が人気のない道に響く。
発砲の反動で手の平に硬い拳銃が押し付けられる。

目を閉じたまま動かないおそ松を数秒見つめ、息を吐きその場を去ろうと顔を上げた時だった。

「あー!見つけたーー!!」

突然の背後からの声に驚きつつ、振り向き拳銃を向けるが、直後黒い影が飛びついてくる。
対処できずそのまま飛びついてきた何かに押されるように倒れる。
頭を軽く地面にぶつけるがさほど痛みはない。

「やっと捕まえた!」

仰向けに倒れた私に馬乗りになる態勢で、あはは、と笑うのは十四松だった。
彼はすぐ側で倒れている兄弟も、私の構えている銃も目に入らないかのようだ。

思ったより早く追いつかれた、さっさと逃げればよかったな。
面倒くさい、撃ってしまおうか。
私は引き金にかけた人差し指に力をこめる、その時だった。

「いってぇー…」

すぐ隣りから聞こえた声に、十四松から目線を移す。
泡立つような、恐怖に近い驚きを感じる。
倒れていた、もう起き上がることはないと思っていた人影がゆっくりと上半身を起こす。

『…は、え?』

いや、だって、撃って、さすがにあの距離は、外してなくて。
まさか、と思い右手に握っている銃を見る。
狼狽する私を他所に寝起きの独り言のように頭を掻きながらおそ松は言う。

「あー、びっくりするわ。
何?爆弾?」

うわ血ぃ出てる、と手に付いた血を見て呟く。

「あれ、おそ松兄さん何してんの!?」

「あ?十四松?
…ムーメ捕まえてんじゃん」

「うん!パーンてドーンてもっかいパーンていったとこでムーメちゃん立ってたからドゥーンてしたんだ!」

「…あー、もしかして撃った?」

それ、と言っておそ松は私の持っている銃を指す。
よくその擬音語で通じるな、と思いながらぼーっと頷く。
どうにでもなれ、という気持ちになってきた。

「いやー、空砲弾入れといて正解だったな」

困ったような顔で笑うおそ松を見ながら思う。
この情けないような、清々しいようなこれは敗北感というものだろうか。
何故だか笑えてくる。
私は銃を下ろし、再び仰向けに寝転がった。
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