第2章 信ずるは良し、信じないのはもっと良い
ここを目的地に選んだのには理由があった。
一つは、人混みに紛れるため。
もう一つが、この木箱だった。
一週間ほど前だろうか。
私は木箱をいくつか、目立たないところに設置した。
その行動自体ただの気まぐれに近かった。
「もしもの時ため」と言えば褒められただろうが、実際は「余った道具の置き場に困ったが、捨てるのも勿体無いから」というものだった。
まさか本当に使うことになるなんて、何があるか分からないものだ。
見分けが付くようにと、雑に赤い線の入れられた木箱。
木箱は小さな電子音と共に宙を舞う。
おそ松は思わぬ反撃に、慌てて木箱に銃口を向けるが、発砲はしなかった。
私は素早くしゃがみこみ丸くなって、耳を塞ぎ目を瞑る。
その直後耳に当てた両手越しに炸裂音と目を閉じていても辺りが明るくなるのがわかった。
木箱の破片だろうか、飛んできた物体が手の甲を掠めていった。
数秒経って目を開け振り向くと、砂煙の向こうに仰向けに倒れているおそ松の姿があった。
私は立ち上がり、様子を窺いながら近づいていく。
爆発の際の破片で頭を切ったのか血が出ていたが、見た目にはそれ以外大きな怪我はなさそうだ。
あれだけ間近で爆発を受けたのに、悪運が強いというか。
おそ松の傍らで立ち止まり、右手に握られている拳銃を奪う。
特に損傷はないようだ。
そのまま銃口を足元で気絶しているおそ松に向ける。
最後に何か声をかけようかと思ったが、意味がないのでやめた。
色々と予定外だったけれど、これでお終い。
私は両手で銃を握り、引き金を引いた。