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【マフィア松】Focus Me【おそ松さん】

第2章 信ずるは良し、信じないのはもっと良い


『…降参。あー、殺せなかった』

ふふっ、と笑いながら手の甲で目を覆う。
笑ってるのになんだか泣きそうになる。

「やったぁ、僕の勝ちー!」

十四松が無邪気に笑い、私の上から退け立ち上がり、右手を差し出してきた。
この隙に逃げようと思えば逃げられたのかもしれないが、その気も起こらなかった。
素直にその手に掴まり立ち上がる。

「ふーん、もう逃げないんだ」

おそ松が意外そうに言ってくる。

『…危害を加える気がないのはわかったし。
何か聞きたいことがあるなら聞くよ』

服の汚れを払いながら目線を合わせずに言う。
頭が冷えてくると、さっきまで殺そうとしてた人物と会話しているのがなんだか気まずい。

「…素直なのはいいけどさー、何かキャラ違くない?」

昨日はもっとかわいかったよ?と口を尖らせる。

『昨日は初対面だったし、いい印象持ってくれたほうが後で接触しやすかったから。
今更猫被っても意味ないでしょ?』

可愛い子キャンペーン終了、と言って銃の持ち手をおそ松に向けて差し出す。
おそ松はそれを受け取り目視で点検すると、私の額に銃口を向ける。

「いいけど、そっちは俺の事殺そうとして失敗して捕まってんだよ?
もうちょっと下手に出てもいいと思うんだけど」

『命と情報取り引きするだけなんだから、対等』

私は銃身を手の甲で払いのける。
おそ松は不満げながら銃を仕舞った。

「…まー、欲しいのは情報だけじゃないんだけどな」

聞かなかったフリをしておそ松の後ろを歩くと、正面から少しレトロな車が走ってきた。
運転席から顔を覗かせるのはトド松だった。
助手席にはサングラスを掛けたカラ松の姿も見える。

「そっちも色々聞きたい事あるんじゃない?
取り敢えず積もる話は事務所でしよーぜ」

促されるまま車へと向かう。


新しい本を開く時のような、新鮮な、キラキラしたものが心に浮かぶ。
それを潰すように、私は空気をひとつ飲み込んだ。
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