第2章 信ずるは良し、信じないのはもっと良い
金属バットと正面衝突したコンクリートは小さなクレーターを刻んでいた。
あれが脳天を直撃していたら、とゾッとする。
危害は加えないとか言ってなかったか。
言ってなかったかもしれない。
「十四松!あまり怪我させるなよ!」
下からカラ松が叫ぶ。
どうやら言っていたらしい。
「ダイジョーブ!全然当たんない!!」
あはーと笑いながらこちらに向かってバッドを振り回してくる。
しかしマフィアがバットを武器に使ってくると思わなかった。
大振りなそれをかわしつつ後退し、コンクリートの壁の上から、斜め上の隣の民家の屋根に飛び移る。
ちらりと十四松を見るとぽかーんと口を開けて見ていたかと思えば、すぐに目を輝かせる。
そしてホームラン予告よろしく、バットの先端ををこちらに向けた。
「鬼ごっこするの!?
俺、すっげー足速いよ!」
走り回るのも疲れてきたが、ここでバットを振り回し続けられるよりはマシだろう。
声にはせずに笑顔だけ返す。
「よーし!じゃあ数えるね!」
十四松はバットを肩に乗せ、いーち、と数字を数え始めた。
数える、の意味がわからず立ち尽くす。
さーん、と言いながら「逃げないの?」と言いたげな不思議そうな表情で首を傾げる十四松を見てようやく動き出す。