第1章 カードの手が悪くても顔に出すな
お礼を言いつつ、膝の上におかれたサンドイッチをみる。
野菜とハムが白い食パンで挟まれたごく普通のサンドイッチだ。
作られてから時間がたったのか、野菜は少し萎れていたが充分に美味しそうだ。
包装は開けられた跡はなく、不審なところもない。
「じゃ、俺はこれー」
「僕はこれにしよーっと。十四松兄さんは?」
「んとねー、これかな!」
それぞれ食べるものを決めたらしく、十四松とトド松はイスを持ってきて座る。
おそ松はソファーに座っていたが、トド松に「女の子の隣にずっと座ってるのってセクハラじゃない?」と言われ、結局十四松がもう一つ持ってきたイスに座らされた。
三人が一斉に「いただきます!」と挨拶するのにつられ、私も小さく続いた。
サンドイッチの包みをあけ、一口かじる。
おそ松の言っていた通り、これは確かにおいしい。
空腹が手伝ってか、サンドイッチを両手で持ち、一言も喋らずもくもくと食べ進めた。
二つ入っていたうちの一つを食べ終わったころ、三人の視線がこちらに向けられていることに気づいてハッとなる。
まずい、お腹が減っていたとはいえ夢中になりすぎた。
恥ずかしさから顔が熱くなる。
『あ、あの…』
「ムーメちゃん、おいしそうに食べるね!」
なんとか言い訳を搾り出そうとしていると、斜め向かいに座っていた十四松が声をあげた。
彼なりのフォローなのかもしれないが、余計に恥ずかしくなり、下を向いて両手で顔を覆う。
もはや言葉がまとめられず、うー、とかあー、とかそんな声しか出せない。
「すっげーかわいいよ!」
私の予想からずれた言葉に思わず目線をあげると、笑顔を浮かべる十四松と、まじまじと私の顔を見つめるおそ松と、何故かスマホを構えているトド松がいた。
「いやー、わかってるね十四松。
やっぱり美味しそうに食べる子っていいよね。
しかも俺の選んだご飯をよ?最高じゃん」
「食べ方もリスみたいでかわいかったし。
ねえ写メ撮ってもいいかな?」
雰囲気からして、本心なのかもしれないが、やはりあの姿を見られたのは女として大失態だ。
『…写メはだめ。見られるのもやだ…』
なんとかそれだけ言って、私は再び赤くなっているだろう顔を両手で覆った。