第2章 昔と変わらない桜の木
トントン…
誰かに肩を優しく叩かれる感触。
『…はっ。』
目を覚ますと、目の前で綺麗なおばさまが少し困ったように微笑んでいた。
「ごめんね、私ここで降りなくちゃなの。」
どうやら私は電車の心地良い揺れに眠気を誘われ、見知らぬおばさまにもたれかかっていたようだ。
『あっ…すみません!』
「いえいえ…では…。」
到着駅に近づいた電車はゆっくりとホームに寄り添う。
駅についたよと母にメールを打ち、久しぶりに見る改札口を通れば少し前と何も変わりない景色が広がっていた。
昔から広場の真ん中にたっている一本の桜の木を見ると
ああ、帰ってきたんだなぁと実感が沸いた。
「ぶりぶりに満開だなぁ…」
「おーい、さくらー」
「あ、お父さん。」
「おかえり!荷物重たいだろうから迎えに来てやったぞ。」
「お父様…!助かります!そしてただいまっ♪」
「おふたつですね、1000円になります。」
「あ、やっぱり一人で帰るんで結構でーす。」
「おい、冷たいこと言うなよ!」
今日のごはん、お母さん結構張り切ってたぞーと笑うお父さんは数年ぶりに会っても相変わらずで心の中が安心感であたたかくなった。
他愛もない話を続けながらお父さんと歩いていると、
ポケットからメールの着信音が鳴った。
お母さんからだ。
「なんだろう?」
「母さんか?」
「ついでにソースとファッション誌買ってきて!…だって」
と言っても、もう家の近くまで来てしまった。
「うーん、ちょっと戻ってコンビニで買おっか。」
「荷物重たいからお父さん先に帰ってるぞ。」
「あ、そっかごめんね。分かった!」
財布だけ手に取り、あとの荷物は父に任せてコンビニへ走った。