第3章 移り変わりゆくもの
「ハァ、さくらちゃんってよく噛むよねぇ」
笑い疲れたのかトド松くんの声が呆れている。
「つい、緊張したり焦っちゃうと噛んじゃうよね、アハハ…」
「へぇ~…なんか緊張するようなことあったの?」
「え?…ぁ」
自分の墓穴を掘るような発言に今更気づいたうえに、どう返せば良いのか分からない失態に陥る。
「さっきのさ…」
必死に脳をフル回転している最中、横からトド松くんの声が近付く。
「へっ?」
気が付くともうトド松くんの息が耳に当たるくらいの距離になっていた。
「…さくらちゃんのほっぺ触ったら、耳まで真っ赤になったのって関係ある…?」
あまりにも近くて、甘い、突然の囁き声に思考回路が停止し、耳から顔へ、顔から胸へとカァッと熱が伝わっていく。
「ト……トドマツクン…?」
心臓がバクバクと暴れて全く冷静になれない中
トド松くん酔うとご乱心タイプ?
ていうか今までの取り乱し全部バレてる?
と必死に今の状況を考える。
「…また耳真っ赤になってる。ねぇ、さくらちゃんもしかして狙ってやってる?」
「な、なに、が」
「いつからそんなに可愛いコトするようになったの…?」
ポスッ…
とトド松くんは私の首元に頭をうずめた。
トド松くんの顔の熱が、首元からジワジワと伝わってくる。
「ね、と、トド松くんどうしちゃったの…!」
恥ずかしくて息が止まりそう。
「…お酒入ると、素直になっちゃうの困るね」
トド松くんが首元で喋るせいで首がくすぐったいようなぞくぞくするような、変な感覚に襲われる。
「オイ!!」
ゲシィッ!!
トド松くんの背中に何者かの蹴りが入り、私は一気に現実に引き戻された。
「おぶぇッ!!」
私に軽くもたれていたトド松くんが蹴られ、当たり前のように私は巻き込まれトド松くんの下敷きになる。
「イッッ…タァ!!」
「おい、お前大丈夫か!?」
「うっ、トド松くん、どいて…!トド松くんてば!
ハッ…!?
し、死んでる、」
「いや寝てるだけだから」