第14章 10月23日*伊月*
が携帯の画面を見て、ふと何かに気付いた。
「俊くんもうすぐ誕生日だね。」
「あ、そうか。もうそんな時期なんだな。」
気が付けば10月に入り、少し肌寒くなってきて、制服も夏服から冬服へと衣替えしていた。
11月から始まるWC予選に向けて、部活もますます忙しくなってきていたので、毎日が目まぐるしく過ぎていた。
「なんか欲しいものある?」
小さい頃からずっと一緒にいた。
当然毎年誕生日はお祝いしてくれていて、さすがにあげるものも尽きてきたのか、ここ数年はこうして聞いてくれる。
今年は幼馴染みから恋人に変わって初めて迎える誕生日なので、少しばかり期待はしてしまう。
「欲しいものね…干し芋が欲しい!もー!…キタコレ!」
「わかったわかった。じゃあ干し芋ね。」
「ごめんって!うーん…あ。」
「何か思い付いた?」
思い付いてしまったけど、これは心の奥底に秘めていたもの。
こんな事言えないだろ。
「…いや、やっぱいい。」
「何で?教えてよー。」
がぐいぐい袖を引っ張ってせがんでくるものだから、言わざるを得ない状況に追い込まれた。
「…が欲しい。」
「へ…?」
「…なんてな。冗談だよ、冗談。」
「もー!からかわないでよ!」
恥ずかしくて顔を背けていたのが良かったのか、気持ちを読み取られずに済んだみたいだ。
口をポカンと開けて、目を見開いていたところを見ると…まだ早いかな。