第11章 暴君と私*青峰*
「え…?」
ぽかんと口を開けていると、大輝は私の手を一方的に握り、人気のない階段まで連れ出した。
すると壁際に私を追いやり、両手を壁についた。
もちろん相手は自分より遥かに背が高い男の子だし、バスケで鍛えられた両腕に行く手を阻まれてしまっている。
大輝は少し屈んで、私に顔を近づける。
見つめる眼差しはまるで獲物を捕らえるかのようで、目を逸らすことが出来なかった。
「おい、。お前誰と付き合ってんだよ。」
「…大輝。」
「じゃあ俺だけ見てればいいんだよ。お前は俺のものだ。」
私の答えなんか聞かずに、大輝は唇を寄せた。
もちろん優しいキスなんかしてくれなくて、うまく息をさせてくれないほど。
私の様子になんて目もくれず、貪るように唇を重ねる。
こんな時まで俺ペース。
でも、本当はちゃんと分かってる。
大輝の不器用な愛情表現を。
この強引なキスだって、私に「好きだ」ってたくさん伝えるためのもの。
照れ屋でぶっきらぼうだし、優しくするなんて恥ずかしくて出来ないのも知ってるよ。
「…ちゃんと分かってるのに。」
「あ?」
唇が離れて、行く手を塞いでいた体からも解放されて。
一人言のようにぽそりと呟いた言葉を、前を歩いていたのに大輝はちゃんと拾い上げた。
「ほら、行くぞ。」
離れられないように強く握られたその手からは、大輝の真っ直ぐな愛情が伝わった。
「ぼやっとしてんじゃねぇよ。」
…ような気がした。