第49章 傍にいるから*宮地*
着替えを済ませて清志先輩と合流して、二人でいつもの帰り道を並んで歩いた。
私を待っている間に用意してくれていたのか、温かいココアが手渡された。
「清志先輩、今日どうしたんですか?」
「…暇だったから待ってた。卒業試験近いしな。」
「暇だったから」はきっと照れ隠しなんだろう。
清志先輩が私を待ってくれていた。
理由がどうあれ、もうそれだけで十分だった。
「…ありがとうございます。でも退屈じゃなかったですか?結構遅くなっちゃったし…。」
「全然。前はよくが俺の自主練終わるの待ってただろ?なんか、待ってる時の気持ちが初めてわかった。」
「どんな気持ちだったんですか?」
「…早く会いてぇなって……こんなこと言わせんな!轢くぞ!」
頭を痛くないげんこつで小突かれて、清志先輩は一歩前に進んでしまった。
「轢かれたら私ペッタンコになりますよ?」
「なるか!…ほら。」
私の方を振り返って差し伸べられた手をそっと握ると、清志先輩の指が私の指の間を通っていく。
また、隣に並べた。
清志先輩の背中を見つめるよりも、隣に寄り添っていたい。
これから先、今度は学校が変わってしまう。
生活スタイルも変わってしまう。
不安だけれど、会えて嬉しいと思う気持ちと、会えなくて寂しいと思う気持ちは一緒。
「…清志先輩。」
「何だよ。」
「これからも側にいたいです。…いいですか?」
「…当たり前のこと聞くな。」