第47章 一番の薬*高尾*
台所からの物音が消えて、足音がこっちに近付いてくる。
扉が開くと、和くんが小さな土鍋をトレーに乗せて持っていた。
「ちゃん、雑炊持ってきたぞー。起きれるか?」
もぞもぞと気だるい体を起こしている間に、彼はお椀に雑炊を取り分けてくれていた。
「ありがとう…。」
そう言ってお椀を受け取ろうとしても、彼は手から離さない。
「熱いからな。このまま食うと火傷しちゃうって。」
蓮華で掬った雑炊にフーッと息をかけて、彼はそれを私に差し出した。
「…えっ!いいよ!自分で食べられるから!」
つまり食べさせてくれるということに気付き、気恥ずかしくて顔がまた熱くなった。
「こういう時しかこういうこと出来ないっしょ?俺もしたいし、甘えてくんない?」
照れくさそうに顔をくしゃっとさせて笑う顔が私はとても好き。
「…じゃあ、お願いします。」
彼が嬉しそうな顔をして食べさせてくれるものだから、私まで何だか嬉しくなってきて、気付けば完食していた。
「おー!全部食えたじゃん。偉い偉い。」
くしゃっと髪に触れると、彼は私に枕元に置いてあったお薬と水を手渡した。
粉薬が嫌いな私は、顔をしかめて何とか流し込んだ。
「薬飲んだら、ゆっくり寝てな?」
「…和くんいるのに、寝ちゃったら勿体ない気がする。」
「嬉しいけど、俺は早く元気なちゃんになってほしいから。」
「…わかった。…寝る。」
体をまた横たわらせると、彼は私の手を軽く握り、体を心地よいリズムで叩いてくれた。
さっきは全く寝付けなくて、ただただしんどいだけだったのに。
大好きな人に側にいてもらっていることで、こんなにも安心できるんだ。
眠りに落ちてしまう前に、ちゃんと気持ちを伝えておこう。
「和くん…。」
「ん?」
「側にいてくれてありがとう…。」
「いやいや。ちゃんの為ならこれくらいするって。…早く元気になろうな。」
穏やかな彼の笑顔を瞼に焼き付けて、私はゆっくりと意識を手放した。
早く元気になって、大好きな彼に笑顔で会いたい。
貴方が私の一番のお薬。