第45章 12月20日*赤司*
「征ちゃん…。」
そこにいたのは、明後日東京で会う予定の彼女だった。
ピンク色のカーディガンに黒字の小花柄のワンピースを纏う彼女は、変わらず愛らしく、少しだけ大人びたような印象を受けた。
「…どうしてここに?」
彼女がいる、ということを実感できずに、頬に手で触れると、彼女少し照れくさそうにはにかんだ。
「…やっぱり誕生日は一緒に過ごしたくて。前からお母さんにお願いはしてたの。」
「言ってくれれば時間を空けたのに…。」
「びっくりさせたかったんだ。…迷惑だった?」
「そんな訳ないだろう。」
目の前の彼女の腕を引き、腕の中へと収めた。
久しぶりに触れるからか、前よりも彼女を少し小さく感じた。
抱き締めるとこんなに柔らかく、暖かく、花のような優しい香りがするものなのか。
「征ちゃん、何だか前よりも逞しくなった?やっぱスポーツマンだなぁ…。」
「いざという時にを守らないといけないからね。」
「ふふっ…。相変わらず上手なんだから。」
腕の中でくすくす無邪気に笑う顔もあどけなくて好きなんだけど。
「ところで、まだ直接聞いてないよ?」
自分で手紙に書いていたように、やっぱり会えたことへの興奮が先走っているようだ
「あ!そうだったね。…お誕生日おめでとう、征ちゃん。…大好き。」
電話よりも、手紙よりも、やはり隣で直接言われる「おめでとう」は格別だった。
「ありがとう、。…愛してるよ。」