第36章 一緒に出来る幸せ*青峰*
大輝は相当手加減してくれて、何度も私にシュートを打たせてくれた。
退屈させてるかもと思って、顔を覗き込むと大輝は何だか楽しそうに笑ってる。
「ほら、!いけ!」
その声のタイミングでボールを放つと、音を立てずにすっとボールがゴールを通った。
「…うわ!今までで一番きれいに入った!」
「ナイッシュ!やれば出来んじゃん。」
大輝が拳を私の前に突き出してくれて、私もそれに重ねた。
すると、急に風を冷たく感じた。
気付けば日は傾き始めていて、動きを止めた身体に寒さが身に染みた。
「寒っ……。」
ぽそっと呟いて少しだけ身震いすると、大輝はコートの入り口にある自販機で飲み物を買って、一本私に差し出した。
「、あそこ座ろうぜ。」
先に大輝がベンチに座り、私に彼の開いた足の間に座るように促した。
恥ずかしいけど…この寒空の下で他に人もいないから、いいかな。
そっと腰掛けると、大輝は私に片腕を回してコーヒーを口にした。
大輝がくれたカフェオレが喉を通ると、じんわりと身体が暖まる。
「…なんか一緒に好きなことやるのって、いいかもな。」
頭上から聞こえてきた声に、思わず大樹の方を振り向いた。
「バスケ?でも、結局大輝に教えてもらってばっかだったじゃん。」
「…別に上手い下手は関係ねぇよ。好きなやつとバスケやるのが、こんなに楽しいって正直思わなかった。」
そう言って大輝がちょっと照れくさそうにして目を逸らす。
「…良かった。じゃあ今日だけじゃなくて次からは私も一緒にやる。」
こんなことでお役に立てるのなら、嬉しそうな顔が見られるのなら。
あれだけ寒かったのに、一緒にバスケをして、今抱き締められているだけで、こんなにも暖かい。
「早く夏にならねぇかな。」
夏生まれで寒さが苦手な大輝が、早くも2つ先の季節を待つ。
「なりませーん。」
だって夏が来たら、寒さを理由にこうしてくっつけない。
好きな人と、同じものが好きで、一緒に出来る。
私も、大輝と同じように幸せだなって思ったよ。