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黒子のバスケ*Short Stories2

第34章 そっとぎゅっと*水戸部*


わかっていたはずなのに。

彼に恋をして、同じ気持ちになれて、いつも隣にいられる存在になれたのに。

人間って何て欲張りなんだろう。

願いが叶えば、次の願いが生まれてくる。

普通の恋人同士であれば、簡単に叶ってしまう私の願い事。

だけど彼が相手では、それは叶わない。

「声が聞きたい」。ただそれだけなのに。

元々ただクラスが一緒なだけの彼だった。

どちらかといえば、背は高いけど目立たないタイプだし。

何故か一度も声を聞いたことない、不思議な子だなって思っていた。

友達に連れられて見に行ったバスケ部の試合で、コートに立つ彼の、普段とは全く違う必死な表情やパワフルなプレーに胸を打たれて、気になる存在へと変化していった。

自分なりに出来るアプローチはしたけれど、声を出さない彼の気持ちを読み取るのは至難の技で。

だからずっとこの恋心を胸に抱えて、ただ彼を見つめていようと思った。

「がいる時、嬉しそうな顔してると思うんだけどなー。言っちゃいなよ!」

彼の親友であり、通訳でもある小金井くんがこんな嬉しいことを言ってくれたものだから、勇気を出して直接想いを口に出して伝えた。

彼が顔を真っ赤にして、縦に首を振ってくれたものだから、その時は心底嬉しかった。

内心、二人きりの時とかは少しは話してくれるかな?ってどこかで期待していた。

けれどその期待はあっさり裏切られた。

彼の口から一言も言葉は出ない。

表情から読み取ろうとしても、優しい彼は大体笑顔だし、表情がころころ変わるタイプでもない。

「本当に私のこと好きなの?」

何度その言葉を飲み込んだことだろう。

彼の心がわからないという不安が、じわじわと私の中に影を落とした。
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