第31章 怪我の功名*今吉*
盛大にやってしまった。
体育の授業中にほどけていた靴紐を踏んで、足がもつれてグラウンドで転倒。
受け身をとった時についた腕と、ハーフパンツから剥き出しだった足にズキンズキンと痛みを感じる。
洗い場で腕と足についた砂を洗い流そうとすると、水が染みて痛みに怖じ気付いてしまった。
「ー。大丈夫か?」
授業終了のチャイムが鳴るとすぐに、同じクラスの彼氏がひょっこり現れた。
「翔一!…見てたの?」
「そりゃあ、隣で体育やっとったからなぁ。…あー、かなり豪快にやったのう。」
彼女といえども、彼氏に情けない姿を見られてしまったのはとても恥ずかしい。
でも、そんなこと言っている場合じゃないくらい腕と足に痛みが走る。
さっき洗い流したはずなのに傷口からはまた血が滲んでいた。
「とりあえず保健室やな。…歩けるか?」
実は少し足を捻って転んでしまったようで、地面に足をつける度に鈍い痛みを感じた。
擦り傷を作った上に捻挫なんて翔一に言ったら「アホやなぁ。」って言われるに違いない。
「…うん、大丈夫。」
「そうか?…じゃあ行こか。」
すると、膝の裏と脇に腕を入れられ、身体が横抱きになり、地面から足が離れた。
突然のお姫様抱っこ状態に混乱し、翔一の顔を見ればいつもよりも近い距離。
この状況が恥ずかしいし、話すにもいつもより近くてドキッとしてしまう。
「え!?私、大丈夫だよ?」
「強がり言うてもワシにはわかるっちゅーねん。大人しくしとき?」
その眼鏡の前では全てお見通しのようで。
気を遣ってか、あまり人気のないところを通ってくれて保健室へ辿り着いた。