第30章 眠る君に安らぎを*緑間*
ご飯も食べたしお風呂も入ったしそろそろ寝ようかな、といった時間。
そういえば彼は一緒にご飯を食べた後から、「課題をやる」と言って自分の部屋に籠ったまま出てきていない。
「あんまり無理しないでほしいんだけどな…。」
そう言っても頑固な彼は、「人事を尽くしているだけだ。」と一蹴してくるから言わないけど。
労いの気持ちをこめて温かいコーヒーを入れて、おやすみなさいを伝えにいくことにした。
彼の部屋の扉を2回軽く叩いてみたけれど、返事はない。
「…入りますよー。」
恐る恐る扉を開いて彼の部屋へと足を踏み入れた。
すると、机に突っ伏している彼の姿が目に入ってきた。
そっと近付いて顔を覗き込めば、眼鏡の下の瞳は瞼で覆われていた。
「真ちゃん?」
呼び掛けてみても返事はなく、やはり眠ってしまっているみたいだ。
煌々と光るパソコンを見てみると、医療関係の専門用語や見慣れないカタカナ、意味が全く分からない英語でいっぱい。
医者を志すほど賢い彼が、どうして私なんかと付き合っていて、しかも一緒に暮らしているんだろう。
ふとそんなことを疑問に思いつつも、こんな風に付き合ってもう3年。
風邪でも引いてしまったら大変、と私は寝室に毛布を取りに行った。