第28章 11月21日*高尾*
彼の表情は、私が予期していたものとは違っていた。
顔を真っ赤にし、目を見開き、口をぽっかり開けて立ち尽くしていた。
「…行ってやるのだよ。」
心なしか口許を緩める緑間くんに背中を押されて、私は玄関から外に出て彼の元へと走った。
「和成!お誕生日おめでとう!!」
彼の隣にたどり着き、用意していたプレゼントをはいっ!と差し出した。
私の顔を見るなり、彼はぱっと明るい笑顔を咲かせ、プレゼントごと私をぎゅうっと強く抱き締めた。
「ちゃん…、反則だって、こんなの!」
「だって、和成の誕生日を一番に会ってお祝いしたかったんだもん。」
彼が指差したのは、いつも使っているチャリアカー。
リアカーの中は「Happy Birthday!」と書かれた模造紙が貼られ、色とりどりの造花で彩られている。
斜め上の彼の顔をちらりと見れば、照れくさそうな、でもとても嬉しそうな笑い顔。
よかった、私が一番好きな顔してる。
「もー…、朝だから気ぃ抜いてた…。ヤベェ、めっちゃ嬉しい…。ちゃん、ありがとな!」
腕の中の私の頭をくしゃくしゃと撫でて、頬にキスをしてくれた。
彼の誕生日なのに、私まで幸せをおすそわけしてもらったみたい。