第16章 Addicted to you*氷室*
好きな食べ物、ピクルス。
趣味、ビリヤード。
特技、ジャグリング。
…プレゼントの参考になりません。
彼と迎える初めての誕生日を目前に、私は窮地に立たされていた。
去年はまだ出会ったばかりで、私が一方的に好きなだけだったから。
しかも相手が相手だけに、プレゼントを渡すなんて滅相もなくて勇気もなくて。
それが今年は恋人として公式にお祝い出来るなんて、世の中何が起こるかわからない。
休憩中にも誕生日どうしようと考えていると、2m越えの後輩が様子のおかしい私に声をかけてきた。
「ちん、さっきから何うんうん言ってるのー?」
「うん、もうすぐ辰也の誕生日でしょ?何あげたらいいんだろうって…。」
すると紫原くんはほんの少しだけ考えて、まったりとした口調で返した。
「えー?ちんがくれるものなら室ちん何でも喜ぶんじゃない?」
「適当だなぁ、敦くんは。」
辰也の影響で名前で呼ぶようになるほど、すっかり紫原くんとも仲良くなっていた。
「だってそう思うし。室ちんはちん大好きだから。」
「え!そんな風に見える?」
「うん。てかちんが他のやつと喋ってると、ちょっと機嫌悪くなるよ?オレとでも。」
そうなんだ。
いつも紳士的で優しい辰也だから、イライラしてるのとか見たことない。
バスケをしている時に見せる顔も、いつもと違って情熱的。
まだ知らない顔があるんだろうな。
これからゆっくり見つけていきたい。
そんなことをほのぼの考えていたら、いつの間にか休憩は終わっていて、敦くんは練習に戻っていた。