第2章 過去
不思議と辛くなかった
いつか見捨てられると
子供ながらに分かっていた
そのいつかが来ただけだって
思ったら涙も出なかった
大きな家に私と年老いて
病気がちなおばあちゃんと
住み込みのお手伝いさんを残して
【私の家族】は行ってしまった
唯一優しかった
おばあちゃんは程なくして
あっさり居なくなった
私は一人ぼっちになった
でも寂しかった記憶はない
学校にも塾にも友達だって居たし
お手伝いさんも
両親が海外に行ってから
【迷惑かけます】って事で
お金をいっぱい貰えるように
なったから
とても優しくしてくれる
私のワガママは
なんだってきいてくれるし
成績さえ落とさなければ
私が何をしても怒らない
私は自由だった
でも家は何一つ楽しくなかった