第3章 あなたに見惚れて 次男
俺は今、懐かしいやつと再会したこともあって、バーで呑んでいた。
相手は女性。といっても高校時代演劇部だったときヒロインを演じてくれた比較的仲の良い旧友だ。異性、というよりも友達どうし、という表現の方が合うやつだ。
「何を飲もうか」
『んー、これは?』
そういってやつが指さしたのはフローズンブルーマルガリータというカクテルだった。
「中々うまそうじゃないか。よし、マスター、これを貰おう」
俺より酒に詳しいこいつはオススメの酒を俺に教えながら飲んでいる。
「フローズンブルーマルガリータです」
出てきたカクテルは綺麗な青のカクテルだ。一口飲むとシャリシャリとした氷とテキーラの相性が抜群だ。
「ふーん、うまいな、これ」
『でしょ!ほんとオススメなの』
マルガリータ‥‥そうか。
「マルガリータ、お前が演じたヒロインの名だな」
『あ、覚えててくれたんだ。意外』
「ふっ、忘れるわけないだろう。なんせ俺が初めて演じた役の恋人の名だからな」
こいつと出た芝居の役名、それがマルガリータだった。
『このカクテル、あの脚本から名前がきてるんだよ?』
「なかなか粋なことをするなぁ、お前も‥‥」
『でしょ!と言うかいっそのこと、ほんとにカラ松の恋人にしてくれればいいのに』
「はっ‥‥?」
『あっはは!冗談だよ~』
全く、なんて冗談を‥‥。
『あ、次はこれ飲んでみない?』
彼女が次に指さしたのは、エンジェルズ・キッスという洒落た名前のカクテル。
「可愛らしい名前だな。マスター、次はエンジェルズ・キッスを頼む」
店のマスターは何故か微笑んでカクテルを作り始めた。