• テキストサイズ

世界はパラレル【HQ・ヒロアカ短編】

第2章 宿題(黒尾)※




「…だったよな?わりぃけど数学のプリント写させてくんねーかな」


私が黒尾に初めて名前を呼ばれたのは、1年のGW明けだった。

「…もう提出したから無理」

嘘。本当はまだカバンの中。

読書中だった私は本から目を逸らしもせず、素っ気なく返事をした。

この時は私は奴をただの五月蝿い馬鹿だと誤解していた。
メリットも無いのに利用されてやる程、私は優しく可愛い女子高生では無い。




「へえ、プリント集めてたのオマエが毛嫌いしてるサッカー部の奴だったけど、そいつんとこまで提出しに行ったのかよ」


私だけに聞こえる様に、黒尾はいつもより低い声でそう言った。
ここでようやく私は顔を上げる。
奴は笑っていた。ニヤニヤと。

よく見てる。
ここで私は黒尾に対する評価を改めた。
ただの五月蝿い馬鹿なんかではない。

奴は…


「…いちごオレ。奢ってくれたらいいよ」


「…思った通り、オマエ食えない奴だな」


そう言ってニシシと黒尾が笑った。

食えない奴、それはそっちだろう。



カバンからクリアファイルに挟まったプリントを渋々出すと、すぐに長い腕でひょいと掻っ攫われた。


「オイお前ら!回答済みプリント手に入れたぞ!」

いつものトーンで黒尾が呼び掛けると、クラスで特に五月蝿い連中がそれに群がる。

「おいクロ、俺にも写させろ」

「女の子脅してプリント奪うとか黒尾くんサイテー」


「ちげぇよ!あ、ちょい待て俺が先に写すんだからな」


私は再び本に視線を戻す。
本を読んでる振りをするが、耳が勝手に黒尾の声を追う。

これはそう、単純な興味。

自分に言い聞かせた。



/ 88ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp