第11章 嘘つきヒロイック(物間寧人)
「最初は同情だった。だって自分と同じ人間が食料に見える世界って地獄でしょ」
「っ、」
それは誰にも言うことができなかった、私の抱える闇。
私[異常者]はみんな[健常者]と違うと知らしめる、頭の中の真っ黒い地獄。
「このまま放っておいて、もしこの先が血欲しさにヴィランになるような事があったら……僕は後悔すると思った。だから血をあげる事にした」
「バカ!バカ物間っ!…なんで言ってくれないの!」
最初から言ってくれれば、こんなに恨むことは無かったのに。
"好き"という一言で、こんなに苦しむことは無かったのに。
「キミが言ったから。悪い奴の血しか飲まないって」
「でもっ、でも……」
私にはそれ以上、返す言葉が見つからなかった。
確かに言った。他の誰でもなく私がそう言ったのだから。
「お前なんて嫌いだ」
「僕は好きだよ」
「嫌いだ、嫌いだ!大嫌いだ!……だけど」
だけど私は、こんなに想ってくれた人を他に知らない。
「……私も、好きになりたいっ」
涙が一筋、頬を伝う。
ぼやけた視界に映るヒーローは、初めて優しく笑った。
-end-