第10章 事象の地平線を歩く猫(轟焦凍)
「轟くんに会いたくないの?」
「そんなの……!」
会いたいと、思わない日はなかった。
「会いたい……喋りたいし、触れたいよぉ」
夕暮れのオレンジに満たされた教室に嗚咽混じりの声が響いた。
「出席番号7番は、"君が殺してしまった女の子"は今でも君に会いたがってるよ。君はどうなの、轟くん?」
「……え、」
緑谷くんが見つめた先、教室の後ろの扉が開いて。
轟焦凍が、しょーとくんがそこにいた。
緑谷くんは彼に向かってなおも叫んだ。
「これは僕のエゴかもしれない。でも轟くんに少しでもその気があれば願うんだ!彼女に、会いたいって!」
しょーとくんは戸惑いながらも、私に呼び掛けた。
「そこに……いるのか?」
それだけで、涙がこぼれた。
「うん、ここにいるよ」
私の返事は聞こえないだろうけど、彼が呼び掛けてくれた、それだけで嬉しくて幸せで。胸が苦しくなった。
「俺は、お前に……」
言い掛けて、しょーとくんは頭を下げた。
「っ、謝るのが先だよな。すまねぇ……俺は、今日の今日までお前の事忘れてた。今も名前すら思い出せねぇよ、情けねえ。それでも……それでももし、お前が許してくれるって言うなら……」
私は跳んで彼に駆け寄った。
「俺もお前に……会いたい!!」
駆け寄って、抱きついた。