第5章 ダイエット(木兎)※
1ヶ月後。
「なんか最近木兎シュッとしたよねー」
「スパイクの調子も良いみたいだし、ちゃんのお蔭かな?」
「そんな、木兎さん自身の努力の結果ですよ」
「またまた謙遜しちゃってー」
自主練中の木兎さんを3人で見てると、途中から白福さんと雀田さんの茶化しが始まった。もーこのリア充!爆発しちゃえ!と。
「いやぁでもちゃんと赤葦が入ってから、木兎の面倒見るのホント楽になったよねー」
「あははっ、言えてる!」
キャピキャピと眩しい笑顔の先輩と比べると、私の笑顔は少し引きつってるかもしれない。
「あれちゃん元気無いけど、夏バテ?」
「いえ、ご心配いりません。少し疲れが溜まっているだけですので」
木兎さんのお相手するのに体力持ってかれてますなんて、口が裂けても言えません。
ミンミンと外で鳴くセミの声に対抗するように、体育館にはヘイヘイヘーイ!とミミズクヘッドの鳴き声が響く。
声のする方に目をやると、ちょうど振り向いた赤葦と視線がかち合った。
ニヤリと笑うと彼はゆっくりと口を動かす。
…ごくろうさま。
蔑んだ笑いはともかく、奴が私を労るなんて珍しい……
はて……
……コイツ、まさか知っている!?
サァァと血の気が引いていくのを感じた。
真偽は未だ闇の中だけど、これがこの夏一番の怖かった話。
…まぁこんなの誰にも言えないんだけどね。
-end-