第3章 光と陰は(常闇踏陰)
「真っ赤なおっはなーの トナカイさーんはー
いつーもみんなのー わーらーいーもーのー」
「、近所迷惑になるぞ」
「うへー」
12月24日、世間はどこを見てもクリスマス一色。いやクリスマスカラーは赤と緑で二色かな?でもね、先生は受験生にクリスマスなんか無いんだって言うんだよね。
塾の後、誰もいない公園のブランコで私と踏陰はコンビニのチキンを頬張り、ささやかなクリスマスを満喫していた。
「あの踏陰が雄英かー」
「その前に受験がまだだろう」
冷静なツッコミが入る。踏陰は最近どんどん大人びてきてる。
「黒影(ダークシャドウ)ちゃんが怖くて寝れないってぴーぴー泣いてたあの踏陰が、雄英かー」
「うっ…いつまでその話を蒸し返すつもりだ…」
「んー、そうだねー。踏陰がヒーローになったらこのネタで強請ろうかな」
冗談半分、本気半分。アルバムに確かその頃の写真があったはず。
「……頼んでもないのに家に泊まりに来て、俺の布団でオネショしたのはどこの誰だったか」
「そんな10年も前の話、ワスレタヨー」
「その口振り、覚えているのだろう」
どうでもいいことを言い合って笑う。
なんだかピンとこないけど、私が踏陰の隣にいれる時間は残り僅かなんだよね。
勝手にしんみりしちゃった私は、冷たい冬の空に右手をかざす。
ぼんやりと光るその色は、寂しさの水色。
私の個性 "発光"。
役に立つのはキャンプの時と、夜中にトイレに行く時くらいで。
どう頑張ったってヒーローになれない、ハズレくじ。
ホント、つまらない個性だ。