第1章 1.ゆらり×ゆらり×出会い
「結構ハンター試験も楽勝かもな…つまんねーの」
すぅ…と温度の下がった瞳で遠くを見つめるキルア。
ゴンを挟んで隣にいるサクラは目を見開く。
彼女の直感が告げた。
(彼だ…!)
胸に下げたダウジングストーンが光ながら揺れていた。
サクラは雷の艶やかな背の毛を握り締めた。
「サクラ!サクラってば!」
「!?」
「もう良いってゴン。話したくねー奴はほっとけって」
自分の思考に深く潜っていたサクラはゴンの声に弾かれたように顔を上げる。
眉間にシワを寄せて、睨みつけるようなキルアの視線を受け止めながらへらりと笑う。
「あ、えっと、ごめん聞いてなかったとです…も一回お願いでけんですか?」
「もー!サクラって意外とぼんやりしてるんだね」
「単に注意深さが足んねーだけじゃねーの?」
ゴンとキルアは口々に文句を言う。
サクラは笑いながら謝って、話の続きを促した。
「サクラはなんでハンターになろうって思ったの?」
この場に来ている者なら至極真っ当な問いにサクラは暫し考え込む。
目的を明かすのは今後の行動に影響する。
言葉は一度口にしてしまうと戻すことが出来ない。
失礼にならない程度に考えをまとめて口を開いた。
「……うーん…私はハンターになりたかった訳じゃないと。個人的な目的の為に今回のハンター試験に出たかっただけなと」
「訳わかんねーよ。オレみたいに暇つぶしって訳じゃねーんなら、ハンターになりたかったから試験に参加したんだろ?」
先ほどの件があるためキルアは風当たりが強い。
しかし、サクラには全く心当たりが無いので、勝手にそういう性格なのだと解釈する。
「うーん…人捜し、かなぁ?」
「なんでそこ疑問系ナンだよ!」
「あはははははっ」
サクラが悩んだ末に行き着いた人当たりの良い言葉を即突っ込むキルア。
島では年の近い友達のいなかったゴンはそんなやりとりが楽しくて仕方がない。
そんな最若年の3人のやり取りを後ろを走る受験者達は信じられないものを見る目で見ていた。