第17章 歌を忘れたカナリヤ
僕とお兄さんは
僕が手首を骨折して通院している時に知り合った
その時はまだお兄さんは車椅子で外に散歩に出れていて
最初はお姉さんかと思った
女の人かと思うくらい、綺麗だった
綺麗で…ガラスみたいに脆く見えた
空に向かって手を伸ばして
何かを掴もうとしていたんだ
『危ないっ…!』
僕の声にハッとしたお兄さんは
車椅子から落ちる事なく、僕を見つめて
そして微笑んだ
『危うく落ちるところだったよ
ありがとう』
『ううん。
大丈夫? お姉さん、』
『…お姉さん…?
僕は男だよ…?』
『えっ…! ご、ごめんなさいっ…!』
名前は シロサキ オト さんと言った
綺麗な名前だと思った
とても大人っぽく見えたけど
お兄さんは14歳の中学二年生だった
通院の度に、お兄さんの病室を訪れた
母ちゃんに強請って
お花を買っていったり
ケーキを持っていったりした
お兄さんのお母さんにもとても良くしてもらった
そのうち
お兄さんは病室から出られなくなってしまった
僕は通院をしなくなってからも
時々お兄さんに会いに行った
お兄さんと過ごす時間は楽しくて
胸がドキドキして
温かかった
優しくて綺麗なお兄さんが
僕は
大好きだった