第17章 歌を忘れたカナリヤ
『僕も…?』
『うん、君も。』
背負っていたランドセルを
邪魔にならない様にお兄さんのベッドの足元に置き
一歩近づいた
『はい』
差し出された手は
まるで血が通っていないかの様に細く、冷たくて
ぎゅっと握ったら折れてしまうんじゃないかって
躊躇しながら
そっとその手に触れて
『せーの、』
『『〜♪歌を忘れたカナリヤは
うしろの山に捨てましょうか
いえいえ、それはかわいそう…』』
アイコンタクトを取りながら
原曲さえも聞いたことのないこの歌を
一音一音を確かめるように
お兄さんと一緒に、歌った
『綺麗な歌声だね』
『そんなっ…!
僕なんか、全然っ…!』
綺麗なのはお兄さんの方だ
『一緒に歌ってくれて、ありがとうっ…!
すっごく嬉しいっ!』
『ホントに?
それは光栄だな
また歌いにおいで…?』
『うんっ…!』
ー コンコン ー
『城咲さ〜ん、血圧測らせてくだ…
あら。智くんまた来てたのね?』
『わあっ…! ごめんなさいっっ…!』
看護師さんは僕を見て
しょうがないわね、って顔をして溜息を吐いた
『血圧測るから、ちょっとだけ下がって静かにしててね?』
『はい、』
『顔色があまり良くないですね
食事はちゃんと食べられましたか?』
『少し、だけ…』
ポシュッ、ポシュッとポンプの音が病室に響く中
僕はただ、それが終わるのをじっと待っている
手持ち無沙汰にキョロキョロとあたりを見渡すと
ふとテーブルの上の雑誌に目が止まった