第16章 ソメイヨシノ
あなたがこんな写メ送ってくるから
思い出しちゃったじゃんか
もう20年も前の事…
「しょーちゃん、なんかニヤついてるよ?」
「ニヤついてねーわ」
「もしかしてリーダーからメール?」
「内緒」
相葉くんが覗き込もうとするから
慌ててスマホを閉じた
『桜が綺麗だよ』
たった一言の文章に添えられていたのは
奈良の千本桜を背景に
両手を広げて立っている貴方の写真
それはまるで
“翔くんもおいで”
と言っているかのようで
智くんが東京に戻る頃には
今度は入れ違いで俺が地方にロケに出る
こればっかりはしょうがないよね
来週になれば会えるとわかってはいても
やっぱり今すぐにでも会いたいよ、智くん…
『……くん! 大野くん!』
『んー…? …何だぁ?』
『何だじゃないよ! 振付師の先生来ちゃうよ!』
『もーそんな時間?』
短い休憩時間の間でも昼寝出来ちゃうのは
智くんのちょっとした特技で
『翔ぉー、起こして?』
『もう!』
差し出された手を握って引っ張り起こすと
尚も眠たそうにあくびをしてたよね
智くんの手を引きながら
あの長い廊下をよく早足で歩いてたっけ