第13章 私と海と電話。
もう二時間はここに居るだろうか
少し冷えるな…
バッグの中から薄手の上着を出して羽織る
少し離れたとこにある
ここからも見える、駐車場に
ヘッドライトの明かりが見えた
来た…
立ち上がり、砂浜を歩いてそっちに向かうと
車から降りてきたにのもこちらに向かい、歩いてきた
「まーくん、車は?」
「ん、送ってもらった」
二人並んで
元居た波打際に戻ると
そこに腰を下ろす
「好きだよね、海」
「うん、好き」
「懐かしいね、こーゆーの」
言葉は少なくていい
昔のように
二人で海を眺めていたかった
「最近、いつにも増してボーッとしてるね
なんかあった?」
「まぁ、色々と?」
「ふうん」
さざなみが二人を包む
「ありがとね、来てくれて」
「そっちが来いって言ったんじゃん
だからわざわざ会いに来たんでしょ、」
「強制はしてないだろ?」
「そーなの?」
ふわっと吹いた潮風が
にのの髪を揺らした
「…何?」
「髪、目にかかっちゃってるから」
指でにのの髪を梳くと
ブラウンの瞳をのぞかせる
「ねぇ、にの。この場所覚えてる?」
「忘れるわけ無いでしょ、二度目のおぞまし体験した場所だもん」
「おぞまし体験て、失礼だな」
あの時を思い出したようにふふっと微笑うと
そのままにのは遠く海を見つめた