第13章 私と海と電話。
あの時もそう
こうやって二人で夜の海を眺めてた
『にの』
『うん?』
『ずっと側に居てくれる…?』
『さぁ。どうかな、』
『なんだよ、それ』
『ふふっ。居るよ、当たり前でしょ?』
握りあったその手が温かかったこと
今でも覚えてる
『……だよ…』
『何?』
『好きだよ、にの』
一度目は波に掻き消されたその言葉も
二度目はハッキリ届いただろう
『うん、知ってる』
まっすぐ海を見つめたまま
にのの手にぎゅっと力が込もる
『にのは…?』
ゴクリ、と息を呑んで
その横顔を見つめた
『私。 海。 電話。』
『…え? 何?』
『さて、何でしょう』
泣きそうな顔してんじゃないよ、って
また笑われた
悔しいからその手をグッと引き寄せて
にのを胸の中に収める
トクトクと鳴る心臓の音が
きっとにのにも聞こえてるんだろう
『まーくん』
顔を上げたにのの視線と
俺の視線がぶつかる
『ありがと』
にのの薄い唇が
一瞬俺の唇を掠めて
そして離れて行った