第9章 天からの贈り物
「蝶ちゃんが人間だと思ってる奴らの中にだって化け物なんかいっぱいいるさ!異能力者だって、言ってしまえばそんなものだ…君の能力は異能じゃなかったとしても、僕と何ら変わりなく生まれつきのものだろう?」
『生まれつきで、死ねない身体が手に入る…?』
トウェインさんがハッとしたような表情になり、言葉を続ける。
『身体の隅々まで刻まれて、溶かされて、焼かれて、凍らされて、壊されて…それで死ねるはずなのに死ねない身体のどこが異能力と変わりない?自分の真横で自分の内蔵を切り刻まれて、見せられ、て…ッ、卵胞の一つも無かったの』
「待って蝶ちゃん、その話…」
『それを探すためだけに何回も何回も殺された…ううん、殺されかけた。でも結局死ねなかった、結局自分の身体が…中にあるものさえもが、普通の人間とは違うんだって証明されただけだった』
なんでだろう、悲しいはずなのに、悔しいはずなのに、怖いはずなのに。
どんな顔をすればいいのか分からなくって、思い出すだけ思い出して顔を涙でグチャグチャにして、なのに私、笑ってる。
「君、実験って…そんな……ッ?今言ったのだけで、一つのものッ?」
『そ、だよ…ねえ、これでもまだ人間だって言える?化け物じゃないって、言える??……好きな人にこれが知られてるかもしれないって考えて、どんな顔をして会いに行ける…ッ?』
「……それでも蝶ちゃんは蝶ちゃんだ。化け物なんかじゃなくて、一人の女の子の蝶ちゃんだ…それじゃ、ダメ?人を好きになるのが、そんなにいけない事?人に好きになってもらうのが、そんなにあってはならない事?」
ここまでヤケになって言ったのに、私の事を聞いたはずなのに、私を落ち着かせるように優しく包み込むトウェインさん。
なんで?いけないに決まってるじゃない、だってそんな事してたら、普通は一度しかない人生が全部無駄になっちゃうの。
『私みたいな身体のために、あの人の血を使わせたくない…こんななんにもあげられないような身体、ッ……』
「でもあの人、言ってたんでしょ?子供なんかいらない、そんなのより蝶ちゃんと一緒にいたいって。蝶ちゃん焦りすぎて気付いてないかもしれないけどさ…これ僕、軽くプロポーズ並の告白に聞こえるんだけど」
『へ、っ?』
トウェインさんの着想に間抜けな声を出してピタリと止まる。
告白…?
告白って、あの告白……?
