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第8章 空白の時間


『あ…つし、さ……っ!?』

「蝶ちゃん、いるんでしょ!?」

『ぁッ…と、トウェインさ……っ』

今、こんな状態なのに。
向こうには声だけしか伝わっていないのか……だから私にこんな事をしていたのか。

「…タイガーボーイ!悪いけどこの子は今とても出られるような状態じゃあない」

「誰だ!?お前が蝶ちゃんを…ッ、蝶ちゃん待ってて、すぐに助けに……」

敦さんが助けると口にして、今の状況なんて関係なしに、咄嗟に口が出る。

『やめてッ!!助けなんていらない!!勝手なことしないで!!!』

敦さんからだけでなく、トウェインさんからも少し驚かれる。

『……ッ、大丈夫、きっと太宰さんがなんとかするから。だからお願い、何もしないで…折角、私頑張ってるのに…』

「蝶…ちゃん……?で、でも早く助かった方が…」

『………じゃあ、もし敦さんが外に出たら、伝言お願いしていい?ポートマフィアの誰かにでいい…ごめんなさいって、私は大丈夫ですって伝えてください』

恐る恐る言えば、トウェインさんが使っていなかった方の手で私の頭をポンポン、と撫でる。

「まあ、出られればいいけどね?」

「ポートマフィアに?だけど、ポートマフィアって敵対してるし、そんな事言ったらどうなるか…」

『あの人達の事を悪く言わないで』

色々なものが冷めていくような気がした。
ついさっきまで必死だったのに、自分の喉から驚く程冷たい声が出る。

『私が捕まって、ポートマフィアが…首領が探偵社なんてもう一々気になんてしない。あの人はそういう人だから』

「!気に、しない?」

『ポートマフィアってそういう人達、多いんです。横浜が大好きで、ここを守りたがっていて……私に何かあったら、どんな手を使ってでも助けに来ちゃうような人がいますから』

流石に言い過ぎたかとも思ったけれど、トウェインさんには私が何を言いたいのかは悟られていない。
大丈夫、敦さんになら、これだけ言ったら伝わるはずだ。

探偵社もポートマフィアも、本来、根本的な部分は同じはずなのだから。

この街が大切で、守りたいだけ…私がいなくなって心配するのも、助けようとしてくれるのも、何にも違わない。

「…Qの呪いで、街が大変な事になってる。さっき、阻止できなかった」

『大丈夫、まだ終わってない。まだ出来ることはいっぱいある』

きっと皆、無事でいる
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