第7章 克服の時間
目の前に立っているのは、紛れもなく今の私の敵の長。
組合の団長、フランシスだ。
私とフランシスの間に流れる張り詰めた空気に何かを察したのか、烏間先生までもが口を割り込ませる。
「白石さん、君だって今万全の状態ではない、一人では危険だ!それに取引先などに構っている暇は『いいから早く行ってください!!』…白石さん、?」
私が烏間先生に声を荒らげるのに、フランシスも驚いている。
『…これは私の会社の方の問題です。いくら烏間先生といえども、こんな非常事態にこちらに首を突っ込まれると困ります。すぐに追いつきますし、なんならこの人と一緒に行動して追いかけてもいい』
フランシスは私の考えに気が付いたのか、成程と一人納得した様子だ。
「その人と!?関係の無い人をこんな事態に巻き込むわけにはいかないだろう!?」
『……烏間先生、気づいてください。私からすれば、この人との取引については、烏間先生と皆の方こそ関係の無い人なんですよ』
冷めたような声を出して、冷たい視線を送りつける。
お願い、どうか、少しでも早く移動して。
私に腹を立ててでもなんでもいい、私を心配しないで…
「ああ、先生?大丈夫です、これでも俺も異能力者…この子はきっと、貴方方の元まで送り届けましょう」
まさかフランシスの方が乗ってくるとは思っていなかったけれど、それも顔には出さない。
今、私とこの人が敵対関係にあると悟らせてはいけない。
…そうまでして私を連れて行きたいのか、この人は。
「!異能力者…」
『烏間先生、失礼な言い方をしてすみません。……でも、もしここで行ってくださらないのなら、私は烏間先生から依頼された契約を破棄します』
「「「なっ!!?」」」
私の発言にまた意外そうにしているフランシス。
私がここまで思い切るとは思っていなかったのだろうか。
「烏間先生、蝶ちゃんがあれだけ必死なんだ…太宰さんが怪我してて会社の人が敵に捕まってる状態での取引相手なんて、普通に考えてよっぽどの緊急事態だよ。俺らと違って、蝶ちゃんには今会社側の方でも人の命がかかってる状態なんだから」
「……くっ、どうか無事に来てくれ…俺の方こそ、すまなかった。その方が異能力者なのならば、一緒に安全に来てくれると俺も安心だ」
カルマ君冷静な分析のおかげで、なんとか退いてもらえそう。
『はい、すぐ合流します』