第7章 克服の時間
「はは、殺す気も危害を加える気もなけりゃ、警戒のしようもなかったろう」
すぐさま男から飛び退いた。
しかし本当にもう戦う意思はないのだろう、起き上がってこようとする気配すら感じられない。
しかしそれは私も同じ。
今はもう、相手の男を拘束するような余裕もない。
皆がわたしの様子を見て狼狽えていたものの、烏間先生の指示で男を拘束し始める。
『あ、ああ…嘘、何でこれが……っ』
様子に気づいたカルマ君がこちらにいち早く駆けつけてきてくれて、私に話しかけようと肩に手を置こうとする。
「蝶ちゃん、今、何されて『触らないで…ッ!』…うん。俺は何もしないよ」
突き放すような事を言ったのに、カルマ君はしゃがんで、座り込んだ私に目線を合わせる。
『ごめ、なさい…っ、カルマ君のせいじゃ、ないの……』
「わかってる……それ、本物?」
カルマ君の問いに肩を大きくビクつかせて、恐る恐るそれに触れる。
男に突然にされた事……された、と言えるほどの事でもなかったのかもしれない。
けれど、相手の戦意が失われたのを確信して銃をおろし、その瞬間に…着けられた。
何でこれがここにあるの、どうしてこんなものを持ってるの。
本物かどうかなんて、能力を使ってみれば一瞬で分かること。
だけど、もしもこれが本物だったら?
……もしも、またあの電流が流れたら?
嫌な汗が止まらない。
流石にそろそろ相手の男を隠し終えて、烏間先生を支えながら皆がこっちに戻ってきた。
「カルマ…白石は、どうしたんだ?」
「様子が…」
磯貝君と烏間先生はこの事態に気が付いたのか、目を見開いている。
「!……白石、それ、もしかしてさっき着けられたのか?」
寺坂君が声を発して、他の子達も気づき始めた。
少し大きな、枷のような…真っ黒なものが、首にはめられている。
これの事はよく知っている。
鍵などというものは無くて、ただはめてしまえば、これと遂になるコンピューターで操作しなければ、外れない。
外部から壊すなら、これの中核ごと一気に破壊しなければならない…そうしないと、自発的に電流が流れる仕組みになっちゃってるから。
それに、そんな壊し方を普通にしたら、私の首がただではすまなくなる。
中也さんがいなくちゃ……あの人がいなくちゃ、何も、出来ない。
『…ね、………いない……?』
思考がおかしくなっていく。