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第6章 あたたかい場所


すぐに着替えを終えてリビングに戻ると、案の定中也さんはまだ痛みに悶えていた。

「!ち、蝶っ……てめっ、マジで殴りやがっただろ」

本来ならば手を出した私が悪いのだけれど、正直殴られるような事をした当然の報いだと思っているため、知らないふりをする。
けれどもそこであることに気がつき、中也さんに視線を戻して眉を潜めた。

すると中也さんは私の雰囲気が変わるのを察知したのか、タダでさえ顔が青いのに更に顔色を悪くする。

「蝶…?な、何でそんないきなり怒ってんだよ?確かにさっきのはやり過ぎたと思って……『違う』は?」

『…………手前?』

「手前って…俺の……あ、…ああ!!?」

つい先程の自分の言動を思い出したのか、我に返ったように焦り始める。

「わ、悪かった!!あれは無意識っつうか必死だっただけっつうか、使うつもりは一切無くてだな!!?」

『あーあ、中也さんに手前って言われちゃった。蝶怖いなー、特別扱いなくなっちゃったー』

「頼むからもう許して下さい蝶さんお願いします!!」

さっきの仕返しだと言わんばかりに中也さんの痛いところをせめる。

面白いくらいに焦る中也さんに笑いそうにもなるけれどもう少し我慢だ。
私は天然なんかじゃなくって、悪戯っ子なんだってところ見せてやるの。

『どうしよっかなー…中也さんから手前って呼ばれちゃったもんなぁ〜』

「………アイスクリーム五段でいかがでしょうか、ケーキも付けます」

『八段。あとケーキは三つでパフェも食べたい』

「今すぐ行きましょう、喜んで!!」

『合格♡』

中也さんが私の食べる量を聞いていつも顔色を悪くするのは、決してお金の問題ではない。
食べるもの全てを中也さん自身と半分こさせられてしまうため、自身の胃の危険を察知してそういった反応になるのだ。

十八よりも前にロマネコンティだなんてワインや、挙句の果てにはペトリュスだなんて破格の値段のワインを入手するのにも余裕があるくらいに、もちろん貯金はしているけれども収入はある。

私もそれに負けないくらいには稼いでいるつもりだ。

だからまあ、怒った時にスイーツを食べさせる…と同時に食べさせられるという事でよく手打ちにしてきていた。

私服に着替えて中也さんの元に戻って、盛大な笑顔を送る。

『これでも天然?』

「天然だ……が、さっきのはマジで俺が悪かった」
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