第6章 あたたかい場所
朝になって、ついに今日から夏休みスタート!
なのはいいのだけれど…
『…心臓に悪いこれ』
修学旅行の時もあったな、なんて思いつつ、昨日の夜に引き続き、叫びたい衝動を抑える。
朝起きて目を開ければ、中也さんがそれはそれは綺麗で端正でかっこよくて素晴らしい寝顔をされているわけでして。
それにとどまらず、そんな中也さんに向かい合わせに抱きしめられた状態のまま目が覚めてしまったのです。
当の本人は気持ちよさそうに、普段あまり見せないような穏やかな表情で眠っている。
その表情にドキドキするものの抱きしめられているというのがあったかくて何だか安心して、中也さんともっとくっついていたくなる。
「……ん、?…は!!?」
『あ…おはようございます』
おはようございますなんて言いつつ、慌てる中也さんの首元に腕を回して擦り寄る。
こんなに至近距離で朝起きることなんてそんなに無いんだもの、いいじゃない。
「ち、蝶!?はよ…はいいが何でんな擦り寄って……!?」
『だって中也さんがそこにいたから……っ…れ、?』
私から腕を離して、それこそ修学旅行の日のように私の腕を掴んでベッドに組み敷いて、中也さんが私の上から被さる。
少し違うのは、今日の中也さんは慌ててそうしたってわけじゃなさそうで、私の目をじっと見つめて真剣な表情をしているということ。
中也さんに見られるのが恥ずかしくて、体制が体制なので目を伏せる事しか出来なくなった。
『あ、のっ…何、ですか……?』
「…蝶がそこにいたから、お前の顔をもっとよく見たくなった」
『なっ、…!!?』
私がさっきしたような返しを倍にして返されたような気分だ。
羞恥で顔に熱を集めて少し抵抗してみるも、中也さんは私の体に負担をかけないくらいの絶妙な力加減で私を捕まえたまま、こちらを見ている。
「プッ、無理だって分かってんだろ?まあ可愛らしいから大いに結構なんだがよ」
『!……そ、ういうのずるいっ、です』
顔をくしゃりと笑わせて、中也さんは私の胸を煩くする。
ゴク、と喉を鳴らせば、中也さんの顔が近づいてきて、恥ずかしさに目を瞑った。
『____っん…な、んでっ……』
「悪い、お前見てたらしたくなった。…そろそろ起きるか」
私から離れて、中也さんはベッドから降りて立ち上がる。
触れ合った唇は、まだ熱いままだった。