第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ

「俺がお前を褒めたらなんで全部親バカって事になんだよ！？…ケーキ全部俺が食うぞおい」

ケーキ用のフォークでまたチョコケーキを切って食べようと自分の元に運ぶ中也さんの手をついつい目で追ってしまう。

ケーキ…味落ちてるのに、それにまだ私食べてないのに。

「……んな顔してんじゃねえよ、独り占めしねえから」

『！じ、自分で食べれるっ』

呆れたような口調になりながらも私にフォークを向け、ケーキを差し出す中也さんに思いがけず恥ずかしくなる。
そうだ、さっきからずっとこうやって中也さんから…

考えただけでも恐れ多い事だ。

「今日は俺が食わせんだよ。ほら、早く食えって、俺だってこれ全部食いてえの我慢してんのに」

我慢も何も、これ元々私の分…なんて思いつつも、私のデザートをそこまで食べたいのだと感じさせてくれる彼の言葉に満更でもなくなって、ぐっと叫びたい衝動を我慢してフォークに顔を近づける。

フォークが目の前に来て、お手製のチョコケーキが一口サイズ…よりも少し大きめにそこにある。

中也さんが食べるくらいのサイズだから一口で食べ切れそうにはないし、何より自分からまじまじと見られているところで口を開くのがなんとも羞恥を駆られるものだ。

恐る恐る、伏し目がちになって小さく口を開けて、目を瞑ってケーキに口を付けた。

『…………』

はずだった。

予想していた甘みも食感もせず、ゆっくり目を開ければ心底楽しそうにニヤニヤしておられる中也さん。
彼はフォークを少し高いところに持ち上げていて、自分の方に寄せていた。

「ははっ、悪い悪い！お前があまりにも恥ずかしがってたからな、面白くてついいじめたくなった」

『…は、恥ずかしくないですし！もういいです、自分のフォーク持ってきますし！』

「あ？なに誤魔化してやがる、バレバレだっつの…ほら、もうしねえから食えよ」

立ち上がって中也さんの横を通って台所に行こうとすると、腕を掴まれてそちらを向かされた。

『誤魔化してない……それに自分で食べるって…』

「誤魔化してねえんなら恥ずかしくねえだろ？なら勿論食えるよな」

今度は言質を取って私に意地でも自力で食べさせない気だ。

でもまた…今度は真剣な瞳でじっとこちらを見つめて、食べろって本能に訴えてくる彼に逆らえない。

『食べ、るの……？』

逆らおうなんて、思えない＿＿＿＿