第4章 新しい仲間と新しい敵と…ⅱ
気づけば糸成君はシロさんについて帰ってしまったようで、太宰さんはそっちに歩を進めていった。
面識があるせいか磯貝君と前原君のいるところで止まり、私を地面に下ろす。ちゃんと、少しも水の流れていない広めの岩の上に下ろしてくれた。
『…あ、二人共。無事でよかっ……』
「馬鹿野郎!!何俺らの事だけ助けてんだよ!?」
「蝶ちゃんの方がよっぽど怖い思いしてたのに、何で…っ」
二人して勢い良く私に近寄った為、呆然としてしまう。
「ごめんねえ二人共。知っての通り蝶ちゃんこういう性格だからさ、その変鈍感で全然分かってくれないんだよ」
太宰さんまでもが二人に賛同するような事を言い、何故か貶された気分になった。
太宰さんだけではなく国木田さんや谷崎さんまでこっちにきて、私とシロさんとがあまりいい雰囲気でなかったところを見ていたからか、次々に私を心配して皆が駆け寄ってくる。
「びっくりしたよ、蝶ちゃんが……って、あ」
「白石、そのー…引き続き、すまんな」
然し、また昨日のように皆して私から目を背ける。
そしてその瞬間に、私と皆との間に国木田さんと谷崎さんが入った。
「き、貴様ら!!何か見たか?何も見ていないな!?」
「蝶ちゃん、とりあえず急いでこれ着て!濡れても気にしないでいいから、とりあえず着て!!」
谷崎さんに肩から彼の腰に普段巻かれている上着を羽織らされ、流石に二度目ともなればすぐに気が付いた。
『あ、っ……だ、太宰さん!?気付いてたなら先に!!』
「え?蝶ちゃんてっきり気付いてるのかと思っ……ぐほぁっっ!!」
「「「太宰さん!!?」」」
恍ける太宰さんに、国木田さんが蹴りを入れた。
そんないつもの光景を見ていると、私の目の前に寺坂君が、カルマ君に連れられて出てきた。
思わず、太宰さんの外套の裾をキュ、と片手で掴む。
「ほら寺坂、ちゃんと謝れよ」
「わぁってるよんな事!!……白石、その…すまなかった。」
私に向かって頭を下げる寺坂君に、周りも驚きを隠せないでいる。
『…うん、もういいよ。とりあえず頭上げて…気にしないでいいから、ほんと』
これは本心、そのはずだ。
でも、水に落とされた光景が、あの時の感覚が忘れられない。
寺坂君が私の言葉でガバッと頭を上げてこちらに勢い良く近寄った時。
『ん、っ…』
太宰さんの背中に隠れてしまった。
