第4章 新しい仲間と新しい敵と…ⅱ
「まさか他にもガードがいたとは…見たところ異能力者か?これではあまりに部が悪いな」
「部が悪い、だと?貴様まさか、本来の目的は白石だったとでも言うつもりか」
後ろで糸成君と誰かのぶつかり合うような、激しい水音が響いている。
「とんでもない。その子に邪魔をされてはあの怪物を殺せないからね、少し大人しくしていてもらおうと思っただけだよ」
それに顔色も悪いようだし、眠らせてあげた方がいいかと思ってね
何て少し笑うように言うこの人の言葉が本当だとすれば、私はまたあの強い麻酔薬を打たれるところだったのだろう。
注射器の針を思い出して、今更ながらだが身震いした。
「………貴方、プールの水に何か混ぜてましたね?それだけじゃない、昨日この子のクラスメイトに散布させたスプレーも、何か特別なものだろう」
「おや、よくお気づきで。殺せんせーの触手の能力を弱らせるための薬を少々ね…人体に影響はないはずだよ」
人体に、その言葉が重く私にのしかかる。
じゃあ何?昨日も、それに今も様子がおかしい私の身体は…やっぱり人間じゃあないっていう事なの?
『だ、ざいさっ…私は……』
「君は何も考えなくていい。君がただの女の子だなんてこと、皆ちゃんと分かってる」
『………あの人、怖い。攻撃しなくてもいい…から、離れたい』
太宰さんはどこまでも私のことをお見通しのようだ。
少し自分を落ち着けてから、穏便に済むよう、殺せんせーや皆のいるところまで移動する事にする。
『…っ!……ごめんなさい、腰が抜けて立てないみたいです』
ヘラリと笑って見せるが、三人の顔は曇るだけ。
「いいよ、私が運ぶ。っと、あっちもどうやら片が付いたみたいだね」
太宰さんが私をおぶって立ち上がり、殺せんせーの方を向いて少し歩く。
そして彼の声に反応してそちらを見れば、糸成君の触手が膨れ上がってクラスのみんなに囲まれていた。
そっか、水を吸ったら膨らんじゃうんだっけ。
殺せんせーと同じ触手なら、殺せんせーと弱点が一緒になるもんね。
……水、かぁ。
『ん、太宰さん…』
太宰さんの首元に首をすり寄せて、彼にしか聞こえないくらいの声量で呼んだ。
「ん?なんだい蝶ちゃん。なんでも言ってごらん」
『………ちょっと、だけ。もっとくっついときたい。…水と触手はもう懲り懲りだよ』
「…うん、好きなだけ甘えていいよ」
