第29章 白と蝶
『信じらんない…、あ、あんな……み、みんな見てる前であんな…っ』
「大丈夫だろ、どうせ全員見慣れてるんだし」
『初めて見られる人の方が多かったの…!』
「はいはい。どうせこれからもこうだから頑張ってね蝶ちゃん…♪」
半泣きでさえもが俺を満たす。
ああもう、やっとだ。
ここまで長かった、本当に。
『中也さんすぐそう言う…、すぐ恥ずかしいことする…!』
「ウェディングドレス着てまで駄々こねてくれんの?めちゃくちゃ萌えるわ」
『四捨五入したら三十路になる人が二十歳を相手に萌えないでください。この身長と童顔相手にしてそういう発言ばっかりするから、ロリコンって言われるんですよ』
「じゃあ二十歳超えた蝶ちゃんはそろそろ、中也さんを卒業するか?」
『……いいもん別に』
「ウェディングドレスでの別に、いただきました。はい激写、はい可愛い」
『もうやだこの親バカ…!!』
彼女の表情も、豊かになったものだ。
それもいい方向に。
まず、とりあえずはよく笑うようになった…そしてよく、拗ねるようにもなった。
これくらいの方が可愛らしい、というか誰もが通るはずの道なのだから。
だからこそ、これからもまだまだ、ちゃんとこいつの俺でいてやらないと。
なんて新たな決意を胸にして、彼女を独占し、彼女からも独占されるのだ。
なんて素敵な世界なんだろう…俺に、本当に家族が出来てしまうだなんて。
全てはこの少女のおかげ。
そんな宝物を腕で強く抱きしめて、また俺は彼女に口付ける。
「……んで、子供はまだ欲しいと思ってるわけ?俺的には、永遠にお前だけの保護者と旦那でいたいところなんだけど」
俺だって博愛主義者でもなけりゃ、自分の子供だからといって…蝶の子ならば可愛がるが、蝶以上に可愛がることが出来るかは分からない挙句、一生彼女一筋でいたいというのもある。
本当に…子供は、蝶が望むならばでいいのだが。
今日という日に、もう一度ちゃんと聞いておこう。
別に何年か経ってから考え直すことだって可能だし。
『…蝶が中也さんの子供だもん』
「相変わらずだなぁ…こんなに大きくなっちまって。嫁に出す先が俺のところで大満足だわ……欲しくなったらいつでも言ってくれて構わないけどな」
『蝶が一生中也さんのこと独占するんだから』
どうやら彼女もそのつもりのようだ。