第28章 少女のいる世界
「何が、寂しかった?…言ってくれ」
『わ、わたしめいわ「迷惑じゃない。甘えることは、迷惑をかけることじゃないから」!、…ぃ、の?…わ、たし…ちゅうやさ、んに何もかも…してもらってばっか、なのに…ッ』
「ほら、そういう考えの時点で既に記憶無いの自爆してるようなもんだし?…いいよ、俺の方もいっぱいお前に幸せにされてんだから」
『……姫も、肩車されたい』
ぽつりとこぼれた言葉に、彼からの目線を強く感じた。
「肩車…?」
『ほん、とは…お仕事なんて行かないでって…姫以外の人と喋っちゃやだって』
「…うん、他には?」
『…ッ、みんな、いい人…なのにっ、姫から中也さんとってっちゃうの!!…みんな嫌いっ、大っ嫌い…ッ』
酷いこと、言ってる。
醜い自分が、どんどん出てくる。
『姫、まだ中也さんとお仕事したことないっ…買い物なんか行ったことない!!他の、人と話してるばっかの中也さんなん、か…!』
「うん、俺なんか…?」
『…、大っ嫌い、…なの、に…っ……自分、が一番、嫌い…!!』
「……お前なんでそんなにいい子なの?ほんと…だから損ばっかしてんだよ馬鹿」
拘束を解いて、強く抱き締めて、たくさんたくさん口付けを落とされる。
瞼や頬、額に、キスの嵐を振り落とされる。
『だ、からっ…いなく、なったら……ほんとに、中也さんだけのものにしてくれるかな、って…思っ…』
「…肩車、はエリス嬢として…悪い、誰と話してたのがそんなに気になった?」
『……ひぐちさん』
「!……お前見事にジェラシー期じゃねえの。…そういうの、その場で言っちまっても大丈夫なんだぞ?お前が覚えてないだけで、俺らのこと知ってる奴らなら誰でももう慣れてっし」
『じゃあ一週間姫以外と話すの禁止』
「分かった」
『ほら、そんなの無理に決まっ…、て……?』
冗談半分、特にちゃんとした覚悟もせずに発した言葉を、あっさりと快諾されてしまった。
それに目を見開けば、嬉しさを噛み締めるように頬を緩ませた彼の表情が見て取れて、異常な状況なのにも関わらず胸がときめいたりなんかして。
「一週間もお前とだけ話せなんてことお前から強請られるなんて、夢みたいだよ今」
『え…、あ……や、っぱり三日…』
「一ヶ月でもいいんだぞ」
『無理って言葉知らないんですか…、?』
「お前のお願いならそんなものは無い」