第28章 少女のいる世界
そうと決まればてきとうに好きな格好をすればいいと教えられ、言われたクローゼットを開けてみると、そこには質の良さそうな衣服がかけられていた。
その中から、直感で選んだ服を身に纏う。
セットのようにして並んでいたあたり、よく使用していたのだろうか…うん、落ち着く。
それに私好みのセンスだ。
って、私の服だからそりゃあそうか。
『この服、着ても問題ないですか?』
「お?結構あったのにすぐに決めたんだな、どれを…」
部屋から出て、私の声にこちらに振り返った中也さんが、目を見開いて何も言わなくなってしまった。
拙かったのだろうか、この服は。
「…お前、それでいいの?他にももっと…あっただろ、私服」
『なんか、ビビ!ってきたので』
「出社するわけじゃあるめぇし……そんなに好き?それ」
『!はい!着てて安心しま…!そういえばこの服、中也さんの服に似てますね』
「おう、似せて買った分を渡しただけだからな。馬鹿みてぇに隙あらば持ち歩いてて着てもらってるが」
『あ、そうだそうだ、修学旅行で中也さんが買ってき……ッ、?…あ…、ち、ちょっと私部屋戻ります、自分の部屋見たくなってきた』
「そうか?もうすぐできるから早めにな」
修学旅行…それだけじゃない、たしかにこの服はよく着ていた。
そうだ、私は中学校に通っていて、修学旅行で中也さんにもらったこの服を……
修学旅行。
思い出したのは、真っ暗闇で襲われていた記憶。
それを助けられてから、中也さんと電気もつけていない部屋で出会って…それ、から。
『……私…、ま、た…こんな身体…?』
知らない、男の人からいっぱい…いっぱい。
私、また穢くなった。
また、嫌だって言うのに聞いてもらえなくて。
中也さんって、私の旦那さん…なんだよね?
私の好きな人で、私のことを好きな人。
……ダメじゃない、私、なんでこんな身体なのに。
思いつめたところで、急に肩に触れる手。
それに肩を跳ね上げると、その手の相手が私に話しかける。
「…どうしたよ、そんな顔して」
『も、…じ…摺』
「お前、様子おかしいぞ。さっきから霊力が乱れまくってる…何考えてんだ、暴走する前に落ち着け」
『だ、って…だってわた、し…っ』
「………お前にこの世界で何があったのか、細かいところまでは知らない。けど、それを中也は知ってるはずだろ?」