第28章 少女のいる世界
無理矢理にベッドの上へと上がってきたかと思いきや、抱き寄せられて、後頭部をおさえられて…キスされた。
さっきは避けられた唇に。
それに動揺して身じろぎかけるのに、唇を離したかと思えばまた触れさせて、何度も…何度も、口付ける。
啄んだり、少し吸ってみたり、かと思えば優しく触れるだけだったりして、頭の中が混乱して何も考えることが出来ない…なのに、嫌になんて微塵も思えない。
『ンッ…、ふ…、ぁ…っ……あ、ッんぁ…っ』
次第に力が抜けきっていき、今度こそ…今度こそ、彼に自ら腕を回して抱きついて、キスの続きをねだってみた。
すると一旦少し離れて、彼は私の目を愛おしそうに見つめる。
そして片手で頬に触れ、片側の髪を耳にかけてから、また口付けてくれた。
…どうしよう、もうどうにかなっちゃいそうなくらいにこれ、好きだ。
たまらない…たまらなく、好き。
あんなに寂しかったのに、あんなに怖かったのに。
あんなに真っ暗で、あんなに寒かったのに。
独り、だったのに。
『ん、…ンぅ…っ♡……、ンン…♡』
そうし続けていたのが静かに止んで、ぼやける視界をうっすらまた開く。
すると、少し息を途切れさせたような彼が、また私の頬に手を添えて、親指で軽く撫でてから、また目をまっすぐ見つめて言う。
「……なんで、泣いてた?…正直に言え」
『…こ、わ…かった。……なにが、とか…ないのに…こわ…く、て』
「他には?…他にもあるんじゃ、ねえの?」
『!!!…ッ、中也、さ…ん、の……っ、邪魔にし、か…ならないんじゃ、ないかって…!』
「……ほんと、心配性…その優しさ、もう少し自分のために使ってやれって、何回言わせるんだよ」
涙声でそう言って、また口付けて、唇を離す。
感情的になったのが少し和らぐ。
…安心、する。
『ファースト、キス……いっぱい盗られちゃった』
「残念。とっくにお前の初めては俺がもらってる」
『…そう、なんだ』
それなら、よかった。
驚きはなくて、それ以上にまた安心した。
妙に、心地よすぎたから…誰としてきてたんだろうって、疑問だったから。
捩摺や、一護君の成長具合から見て、私が知らないだけでかなりの年月が過ぎているだろうし。
その中でのそんな相手が…貴方でよかったと、心から思う。
「一人にしてごめん。…一緒に、寝るか?」
『!!…、は……い』