第26章 帰郷
「なんとなくお前のそのお願いごとに嫌な予感がしてな?何、簡単だ…俺に勝てばいいだけさ」
『…中也さんには関係ない話よ、たいしたことじゃないからそんなに気にしないで』
「お前の身体を造り変えんのに、俺に関係ねえってか?大アリだ馬鹿野郎、誰が勝手にいじくっていいっつったよ…そんなにいじりたきゃ俺を納得させてからにしやがれ」
息を呑むも、こんな条件を出してくるものの理由も何も聞いてこようとしない。
…当たり前だ、私がこの人に相談も何もしなかったのだから。
けど、私はこの人の重荷になりたくないから…こんなにしんどいのがもう嫌だから、そうしてほしいだけなのに。
分からないくせに、なんで大事なところで邪魔してくるの。
「……俺のこと屈服させる度胸もねえのにそんな馬鹿なことはしねえ事だな」
『…何、挑発でもしてるつもり?生憎だけどそんな安い挑発に乗るほど私は甘くないわよ』
今更あなたのためだなんてことは言わない、これは全て自分のためだ。
何も、無くそうだなんて考えてない。
少しだけ…もう少しだけ、楽になりたい。
ただそれだけ。
「へえ、今のが挑発に聞こえたのか。今相当頭にキてんなお前?」
『!!…本気でやり合うつもり?なんでそんなに嫌なの?いいじゃない、別に悪いようにしてって頼んでるわけでもないのに』
「身体なんかいじらなくていいっつってんだよ。言っとくが本気だぜ、てめぇに怪我させてでも何してでもんなこと絶対ぇさせねえよ」
「ちょっとちょっと中原さん!!?あなたも頭に血が上ってるんじゃな「俺よりよっぽどこいつの方が上ってることに気付かねえのか、担任」な、…!!!」
殺気とはまた違った何か。
名前をつけるならば、全力のわがままだとでも言うべきだろうか。
いや、今の身体の年齢に合わせて言えばそんなに可愛らしいものではなさそうだ。
『…いいわ、じゃあそうしましょ。ルールは?』
「…互いに能力、武器の使用はあり。そして、“どちらかが戦意を喪失したら”決着。…それでどうだ」
『楽しそうでいいじゃない。でもそれ、私に有利すぎるって分かってる?貴方の異能こっちが取り上げたらどうなるかくらい、分かってるでしょう?』
「ドンと来いや、死んでも参ってやらねぇから」
これは長期戦を覚悟しなくちゃ。
この人の執拗さと頑固さは筋金入りなのだから。
