第26章 帰郷
久しぶりの喜助さんとの手合わせの結果はというと。
「…澪ちゃん、もう強くならなくていいッスよ本当に…!」
『千年って大きいよね』
「もう!!なんで瞬歩まで伸びてるの!!?」
『トレーニングはしてたから、?』
私の勝ち。
今回は単純な体術勝負であった上、私はこの人よりも経験値がある。
まあ当然といえば当然…負けたら負けたで私の力量が足りないというところだった。
それにこの人と結婚するわけにはいかないし。
「ち、ちょっと先生目が…追いつかなかったんですが」
「ぼ、僕も…」
「まあせやろうな。あれは“瞬歩”っちゅう歩法で、瞬間的に別の座標に移動する死神の技や…ちなみに熟練度が高い奴ほど速いし、より遠くまで一気に移動できる」
まああいつの場合は移動能力もあるし、瞬歩無くても大丈夫やったんやろうけど…なんであんなに特訓するかねぇあの努力バカは。
なんて真子の説明と共に呆れたような声が聞こえるが、あれは決してバカにされているわけではないと分かっているため反論はしない。
寧ろ褒められてるようなものだし。
「夜一さん連れてきた方がよかったんじゃ…」
『嫌よ、決着つけるのに時間かかるじゃない?お互い全力でやり合ったら多分この辺一帯更地になるし』
「それは確かに…で、お願いは??」
喜助さんの問いにピタリと止まる。
それから、言おうか言わまいか悩んでいたけれど結果的に勝ててしまったため、そのお願いを口にする。
『……私の身体、ちょっとだけ造り変えて』
「…どうして?」
衝撃の走る周りに対して、喜助さんの目はまっすぐ私を見据えたままだった。
『少し消してほしいものがあるの』
「内容によってはボクは嫌だけれど?」
『少しだけでいいから。…こんなにいらないもの』
___嫉妬心なんてもの___
喜助さんの耳元で呟いたそれに、彼は目を閉じて軽く息を吐く。
「澪、それ…本当にお願いしたい?ダメだよ、そんな風に捨てちゃ…分かってるでしょう?」
『少しだけ…本当に、少し。こんなにいらないの、こんな____』
せがんで、必死にお願いしていたその刹那、私の肩を誰かの手が掴む。
少し怒ったような雰囲気を感じて冷や汗が流れるも、恐る恐るそちらを振り向いた。
「よォ…蝶、お前さっきの条件で俺と手合わせしろや」
『!!!…、何。どうして…中也さんが?』
