第25章 収束への旅路
「蝶さんよぉ…」
『…、んにゃ…?』
「…お前俺より酒に耐性ねぇって…いや、いいんだぞ?いいんだけどな?」
一口飲んだら既にそういう気分になりきっている目の前…否、腕の中の少女。
俺が飲むどころの騒ぎじゃない。
これは完全に順番を間違えた、俺が先にある程度飲むべきだった。
『……蝶ね、?一日二十四時間あっても足りないの』
「足りない、って…?」
『一日中中也さんとこにこうやってしてても、足りないの…全然足りてないの、もっと欲しくなっちゃうの』
「…ポートマフィア時代と今と、どっちの方が寂しくない?」
自分から、その言葉を口にした。
こちらも胸が張り裂けそうな思いになるが、恐らく彼女はもっとだろう…順番を間違えたのはあるが、思わぬ収穫になりそうだこれは。
『……分かんない。…前の方が一緒にいた、けど……でも…』
「俺も甘やかすのが下手だったしな…んで?今日はそんなに拗ねてどうしたんだよ?」
『…よさのせんせのとこ行っちゃうの…?』
「いいや?行かねえよ?」
『……ほんとに?』
「本当に」
やはりそこか。
やけに蝶らしからねぇ甘え方をしてくるかと思いきや。
『でもお酒、飲んだ』
「お前が注いだ酒を無下に扱えるわけねえだろ?俺が…ましてや他の奴に飲まれるようなことになるのも我慢ならねえ、だから飲んだんだよ」
『…言ってくれたら、いいのに…そういうの』
「…」
酔い始めるとまた…別方面に素直になって下さることで…
なんだこいつ、本当に蝶か?蝶だよな?ああ、この愛しさは蝶で間違いない…けどこいつこんなこと言う奴だったか?
『蝶が渡した時に飲んでくれなきゃやだ。…他の人にされるくらいなら、飲まれない方がいい』
「…そんなに?」
『だってやだもん…中也さんがよさのせんせのお酒飲んだ…』
「だいぶ根に持ってんなお前…」
乙女心をえらく傷つけたらしい。
そうだ、こいつは白石蝶。
純粋を身体で表したような乙女心の持ち主である。
「…じゃあ今からもっかい飲ませてくれる?…“直接”」
『……ちょうらい、』
少し顔を上げてから、座りきった瞳でこちらを見つめ、唇を開く。
そこにグラスをあてがって少し葡萄酒を含ませれば、彼女の方から口付けようと引き寄せてくれた。
抗わずにいれば、口の中に葡萄酒の香りが広がってくる。