第24章 繋がること
それを確認して、仮説がたてられる。
蝶に効果を示した惚れ薬…こいつはその類のものに弱い。
いや、弱すぎる。
それも相手が俺となると更に極端に、だ。
そこは自分でもよく分かっている。
この世界でいう惚れ薬の本質とは…
彼女が俺に対して見せ続けていた表情が、それを物語っている。
間違いない…素直になるのは確かにそうだったが、蝶の場合は余裕がなくなってきて初めて素直になれる奴。
効能が少し他のものとは違ったらしいが、間違いなくこの場合の惚れ薬とやらは…催淫剤のことを指す。
蝶に効きすぎるほどに効いてしまうものといえば、納得がいきすぎる。
「昨日から我慢してた?…濡れ具合がすごいことになってるけど」
『!!ぅ…、ぁ…』
「…今すぐ気持ちよくしてやりてえけど……効果、切れたら…また俺に遠慮しちまうのか、お前は」
思わずこぼれる本音。
それに、蝶がピタリと目を丸くして固まった。
『え…』
「…いや、なんでもない。ここじゃあなんだから、ベッドに行…、蝶…?」
俺の腕を動かさないよう、両腕を回して固定する蝶。
そんなことしたって俺なら簡単にほどけるのに、こいつは本当にわかっている…唯一、蝶にだけは勝てないことを。
『…遠慮…?中也さん…悲しいの…?』
「…悲しいってより、素直にわがまま言ってくれる方が嬉しい。……それこそ俺が殺しはダメだと言ってても、それでもお前は戻りたかったんだろう?ポートマフィアに」
『!…ダメなこと言ってるのに、嬉しいの?』
「ダメなことなんか言ってねえよ、お前が自由に決めていいことだ。…気をつかう対象が俺でもそれ以外でも…お前はもっと本音を伝えてくれていい」
正直に言って、心底俺は嬉しかった。
彼女が甘えてきてくれたことが…本当の子供のようになって、ようやっとわがまままで言ってくれたことが。
やっと、普通の甘え方を知ってくれたことが。
だから、今度は俺の方が甘えてしまう。
ここまで素直になってくれた蝶を、手放したくなんて思うはずがない…思えない。
彼女の我慢は、人格までもを封じ込めてしまうような強度と時間を有してきていたのだから。
やっと、彼女が本来持つべきものであった時間を…過ごしてくれているのだから。
親というものへの甘え方を…心の底から待ち望んでいたであろうそれを、ようやく叶えられる状況に整っているのだから。