第24章 繋がること
「俺とって…どんな仕事?」
『どんなのでもい「遠慮するなら抱きつかせてやらない」…ポートマフィア、の…お仕事』
言い切った…言い切らせた。
蝶の口から、それを言わせた。
いったい本音を聞くのにどれだけの時間と覚悟がいっただろうか…まあ、半分は俺のせいか。
「殺しが入るような任務でも?」
『私は…中也さんの敵なら、喜んで息の根を止めに行ける』
「……俺が殺しを辞めさせたから…お前に普通の生活をさせてやりたがってるって分かってたから、言えなかったのか?本当は戻りたいんだって」
探偵社の奴らにも恩があるから…それで、誰にも漏らさなかったのか?
蝶の顔を少ししたから覗き込んで、溢れていた涙を指で掬う。
すると彼女はひとつ頷いて、それから更に涙を溢れさせた。
「そんなに泣くこたぁねえよ…誰でも理解してくれるさ。お前の性格だ」
『ッ、…怖、かったの…っ、戻ってくるのも…戻れない、のも…』
四年も監禁されていて、元の居場所に戻れる保証がなかったから。
俺にだけじゃなく、他にだって…居場所があるだなんて思いもしていなかったから。
そしてその間、別組織で作り上げられた自分の居場所。
しかしそれでも、蝶からしてみればポートマフィアは第二の家のようなもの。
蝶自身が生活していた場所であり、蝶が大きく成長した場所でもある。
そして、何よりも…ここには、あまりにも蝶が執着するものが多すぎる。
その中でも大きいのは、やはり織田の存在だろうか。
俺が蝶にやりたいことを口にさせるようにしているのも、その影響があってのこと。
「戻れる…居場所はちゃんとあるし、むしろ増えてるくらいだよ」
『分から、ないのっ…普通の生き方、とか……普通の考え方とか…』
何故なら、知らなかったから。
目を背け続けてきた世界だから。
普通の生活は、全てが眩しすぎる世界で…しかしそれでも、それを手にしたいと“願うことさえ、ただの一度もなかった”から。
『中也さんの隣じゃなきゃ嫌…っ、…普通、とか…学校卒業して、人助けのためになんて働けない…』
私はわがままな子になってしまったから。
他の誰でもない俺のためにあり続けていたいから。
どこか蚊帳の外のような生活では、満たされなくなってしまったから。
そこまで聞いて、俺の思うことはただ一つ。
ああ、どうしてこいつはこんなにも優しいのだ…