第24章 繋がること
『…持ってるのの中から選んでもらうこと、あんまりなくて』
「ふむ…これまでに服を見繕ってもらったことはあったのかい??」
『一応……酷い受け答えをして結局着なかったものなんかがほとんどでしたけど』
そう言って酷く悲しい目をする少女は今、誰を想っているのだろうか…話に聞いていた、最初の世界で恐らく想いを寄せていたであろうことに気が付かなかった相手だろうか。
それとも、深い関係に無理矢理ならないように押し込めていただけで、他にもそういう存在がいたのだろうか……いや、いない方がおかしな話か。
そうでもなかったら、こんなに罪悪感に打ちひしがれたような表情を浮かべやしない。
「酷い受け答えって…そんなまた大袈裟な…」
『…折角用意してもらったもの、開けもせずに置きっぱなしにしてたりばかりだったのに?』
「!置きっぱなしって…意外だね、それは想像つかなかったな」
首領に限った話じゃない…俺でさえもが目を見開いた。
『いらなかったの。欲しくなかったの…優しくされたくなかったの』
____なんで、私なんかに優しくするのかが分からなかったの。
怖かったの。
なぜ怖いなどと思うのか…それは至極簡単なこと。
本人の語っていた通りのこと。
“大切な存在”になられてしまうのを恐れていたから。
「…お前の事を少しでも話せた奴は?」
結論から言うと、そのような人物はやはり存在はしていたらしい。
ただ、どこかの世界で、とある人物の人生を自分のせいで奪ってしまったとかなんとか。
それがあってからは、例えば家族、恋人、果ては友人という関係でさえ、線引きをして接していた…どんな関係にもならないようにしてきていた。
そんな感情を抱かないように…抱かせてしまわないように、そうなる前に世界を跨いで過ごしてきた。
そしてまた、それを全力で止めてくれるような人間は…それを叱って縛り付けてしまってくれさえしてしまうほどに、またそれが出来てしまう力を持った人間が、これまで現れてはくれなかった。
なぜなら、少女が強すぎたから…そして弱すぎたから。
彼女よりも能力で勝らなければ、世界を跨ぐことを止められない…しかし、彼女よりも弱さを知らなければ。
人間の弱さを分かっていなければ、真に彼女のことは理解できない。
彼女からの愛に飢えていたからこその、俺という存在なのだろう。